放射線の数値の読み方 2011 3/28

原子力、放射線化学の専門家 サイハテ父より[放射線の数値をどう読むか]です。

安心も不安も自分で解釈出来てこそなので、その指針になればと思います。

サイハテ父は核融合の世界を「美しい」という動機で40年も見続けた人。

http://alumni-tohochem.sakura.ne.jp/17/kudou.html

数字や利害ではなく根本を「みてきた」人。
放射能に対する人間の恐れの根本から覆す何かがそこにあるのではないかと、今後の活躍を期待しています。

↓以下、父のメールより(内容は2011年3月28日現在において)

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放射線の数値をどう読むか

東北大学名誉教授  工藤博司 (2011年3月28日 記)

原子力事故が東京電力福島第一原子力発電所で起こりました。安全神話が崩れ、多くの皆さんがこの先何どうなるのかと心配していることと思います。私も心配ですが、冷却機能の復旧作業に当たっている方々の努力が実り、事故がこれ以上拡大しないことを願うばかりです。心配の種は放射性物質の漏洩ですが、現段階での発電所の敷地の外での放射線レベルは健康被害を引き起こすまでに至っていませんから、過度の心配は要りません。下記にその根拠を簡単に示します。

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広島・長崎の原爆被ばくの研究を含め、これまでの多くの研究の結果、全身で100ミリシーベルト (100 mSv) の放射線を受けても、健康への影響は一切認められません。200 mSvを超えて初めて何らかの悪影響が出てきます。この100 mSvという数値 (累積) が安全確保の一つの重要な基準になりますので、頭に入れておいて下さい。マスコミの報道では、「人体が1年間に受けてもよい1 mSvを超える・・・」という表現をしますが、これは法令が「放射線取扱施設 (原子力を含む) の敷地境界での放射線量を1 mSv未満に抑えよ」と規定しているのを誤って伝えています。受けてもよい線量ではなく、施設の使用に当たって守らなければならない数値です。

私たちは、地球上で生活していると1年間に2.4 mSv (世界平均) の放射線を受けます。内訳は宇宙線から0.3 mSv、大地から0.4 mSv、空気中のラドンから1.3 mSv、食物から0.3 mSvです。食物からの0.3 mSvには、その摂取によって体内に取り込まれる放射性カリウム (K-40:半減期13億年) や放射性炭素 (C-14:半減期5730年) から出る放射線が含まれ、体重が60 kgの人は、毎秒約6000個の放射線を出していますから、この人は6000 ベクレルの放射能をもっていることになります。放射性原子が毎秒1個の放射線を出すとき、これを1ベクレル (Bq) といいますが、この数値こそが放射能です。マスコミなどでは、放射性物質を放射能と表現することがありますが、本当は間違いです。

自分自身が放射線を出していることを知っている人はほとんどいないと思いますが、自然界はそのようになっていて、そのせいで病気になる人はいません。ちなみに、胸のレントゲン検査を1回受けると0.05 mSv、胃ガンのX線検診では1回に0.6 mSvほどになります。飛行機でニューヨークを往復すると0.2 mSvの宇宙線を受け、宇宙に出るとその値は高まります。宇宙飛行士の野口さんは昨年、国際宇宙ステーション (ISS) に長期に滞在しましたが、そこで受ける放射線は1日につき約1 mSvでした。彼は160日間ISSに居ましたから、累積で約160 mSvの放射線を受けましたが元気に帰還しました。

マスコミ等で流される数値で注意しなければならないことの一つが単位です。シーベルト (Sv) は生体が受ける放射線の量 (線量) であり、ベクレル (Bq) は放射性物質 (厳密にはヨウ素-131やセシウム-137などの放射性原子) が出す1秒当りの放射線の数 [定義は放射性原子の1秒当りの壊変数] であり放射性原子の量に比例します。また、ミリやマイクロという接頭語が単位に付けて使われますが、1ミリメートル (1 mm) が1メートル (1 m) の千分の1、1マイクロメートル (1 mm) が1 mの百万分の1であるように、1マイクロシーベルト (1 mSv) は1ミリシーベルト (1 mSv) の千分の1です。毎時100マイクロシーベルト (100 mSv/h) の線量率 (単位時間当りの放射線量を線量率といいます) が出ている場所に41日間 (約1000時間) 留まっていて、はじめて100 mSvの線量 (累積値=線量率×時間) に達します。

政府の発表も不適切で不安を煽っているように思えます。「暫定基準 (2000 Bq/kg) を超える値の放射性ヨウ素-131がホウレンソウで測定されたが、直ちに健康を害する濃度ではないので、冷静に対応せよ」との発表を聞けば、誰しもが不安になるでしょう。この暫定基準値は年間1 mSvの被ばく線量から逆算して求められる放射性ヨウ素の量に相当しますが、そもそも、暫定基準の設定そのものがあいまいで、日本は国際放射線防護委員会 (ICRP) が提示している値の1/10とか1/100の値を基準値にしています。安全側の値とは言え、過度に慎重な数値であると私は考えます。実際、3月26日の毎日新聞に、『国際放射線防護委員会は21日、日本の現在の被ばく線量限度(一般人で年に1 mSv)を10 ~ 20 mSvに引き上げるよう求める勧告を出した。』という記事がありました。年間100 mSvでも健康に害はないという科学的根拠があるのですから当然です。この値に基づいて基準値を設定すれば、それを超えた段階で「危険だから食べるな。出荷は停止。」と明確な発表ができます。

21日までに、ホウレンソウで検出された放射性ヨウ素-131で、最も高かった値は54,000 Bq/kgです。このホウレンソウを毎日200 g食べ、それを1年間続けたとすると累積線量は0.3 mSvになりす。この計算ではヨウ素-131の半減期 (8日で原子数が半分に減少する) を考慮していませんから、実際にはもっと低い値になり、健康を害するとは考えられません。水道水やミルクに含まれる放射性原子の濃度にも心配は要りません。なお、放射性セシウム-137の半減期は30年と長いのですが、仮に体内に取り込まれても、約70日の生物学的半減期で体外に排出されます。いつまでも体内に残留するわけではなく、1年経つとおよそ30分の1に減少します。

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福島の原子力事故との関連で、放射線の数値の読み方を概説しました。政府の発表やマスコミの報道に不安を感じている方も多いと思いますが、現在発表 (報道) されている数値は安心できる範囲内にあります。累積線量が100 mSvまでは心配無用です。200 mSvを超えるようなら心配して下さい。

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●211 3/29 12:33 映画「ミツバチの羽音と地球の回転」鎌仲ひとみ監督より下記の指摘ありました。
放射性物質が人間の体内でそれぞれの内臓に濃縮される臓器親和性を無視して安全だと言ってますね。
例えば甲状腺が放射性ヨウ素を濃縮する倍率は千倍、ヨウ素の放射能が半分になっても5百倍に、だから安易に安全とは言えないはず。

One Response to “放射線の数値の読み方 2011 3/28”

  1. エム より:

    saihate様。専門家個人の考え方についての貴重な情報発信、ありがとうございました。明らかに”マイクロSv”であるべき所が”mSv”となっているようですので、原文をご確認頂いた方がよろしいかと思います。また、工藤博司先生が提示された”0.3mSv”が何の数字でどのように計算されたのかがわかりませんでした。素人なりに調べてみると、ヨウ素131の場合には”甲状腺等価線量”が指標として用いられているのを目にします。一方、同じmSvを単位とするものとして”実効線量”を目にする機会も多いです。どちらで計算しても”0.3mSv”という小さな数字は出てこなく困っています。上記のメール内容の文脈からして、この数字を過小に示すことはあり得ないように思いますので、何かしら追加コメントが望ましいように思われます。ご検討頂くことをお勧めします。最後に、本記事内容への私の感想ですが、被曝量の限度についての考え方が世界の主流の考え方と相反するもので、極めて身勝手な感じがしました。このような斬新な提案は専門家達のコミュニティ内でその妥当性の議論がなされるべきものであり、素人の一般市民に対して投げかけるべきものではないと思いました。

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